ヨガの完全呼吸法・瞑想のためのプラクティス

ヨガの完全呼吸法・瞑想のためのプラクティス

「ヨガの呼吸」というとどんな呼吸法をイメージしますか?アーサナ(ポーズ)の練習の時に行う呼吸、浄化法のテクニックとして行う呼吸法、そしてヨガの重要な8段階の一つ「八支則」の中のプラーナヤーマ(調気法)。ヨガにはその目的に応じて、さまざまな呼吸法のテクニックがあります。

この記事では、ヨガの最も基本的な呼吸法の一つである「完全呼吸」について見ていきます。完全呼吸を丁寧に練習することで、ヨガのプラーナーヤーマのテクニックを学ぶための基礎を身につけることができます。プラーナーヤーマの実践は、心を落ち着かせ集中力を高めてくれるため、瞑想の準備として重要です。

こんな人におすすめ

  • ヨガの基本的な呼吸法・完全呼吸法について知りたい
  • ヨガの完全呼吸法を学ぶことで、ヨガのアーサナ(ポーズ)のプラクティスに生かしたい
  • ヨガの完全呼吸を深めることで、プラーナーヤーマの実践や瞑想に生かしたい

ヨガの最終的なゴール・瞑想とプラーナヤーマの位置付け

「ヨーガ チッタ ブルッティ ニローダハ」「ヨガとは心の作用を静かに収めるものである」(ヨガスートラ1章2節)

ヨガの古典的な考え方に基づくと、ヨガの最終的なゴールは、瞑想を通じてサマーディ(三昧)という段階に至ることです。そしてそのためにヨガでは、呼吸する息を長く、そして浅くしていきます。呼吸を穏やかに、ゆっくり行うことで、心の動きが鎮まり瞑想を深められると考えられるからです。この呼吸を長く引き伸ばすことが、ヨガのプラーナーヤーマのゴールと言えます。

もちろん、呼吸を長時間止めたり、長く呼吸しようと無理をする必要はありません。プラーナーヤーマの練習にも順番があります。何年も何十年もかけて少しづつ呼吸のペースを長く伸ばしていく、そんな長期的な視点が必要です。

ヨガの完全呼吸法を練習することはプラーナーヤーマの練習(代表的なのは、ナディーショーダナ、カパラバティ)に入る前の準備段階と考えると分かりやすいかもしれません。ヨガの完全呼吸は3つのタイプの呼吸法の組み合わせです。腹式呼吸、胸式呼吸、そして鎖骨呼吸。それぞれの呼吸法について見ていきましょう。

腹式呼吸とは

腹式呼吸は肋骨を動かさないようにして行います。吸う息で肺に空気が入り、横隔膜が下がりお腹が大きく膨らみます。吐く息では、お腹がぺちゃんこに。

吸う息ではアクティブ(能動的)な動き、吐く息ではリラックス(受動的)な動きを意識します。お腹をリラックスさせて行いましょう。お腹の膨らみを感じやすいので最初は仰向けで行うのがおすすめです。

胸式呼吸とは

胸式呼吸は、息を吸った時に肋骨を広げる呼吸法。お腹はへこませたままで、胸の広がりに意識を向けて行います。吸う息で、胸が横に大きく広がり、吐く息では胸の広がりがしぼんでいくイメージ。両手を肋骨に添えて行うと、胸の広がりを感じやすいです。

鎖骨呼吸とは

鎖骨呼吸では、息を吸ったときに鎖骨が少し引き上げる呼吸法。お腹はへこませたままで息を吸います。吸う息で、胸を膨らませ、肺の上の方まで呼吸を送るようなイメージで鎖骨を引き上げます。吐く息で、鎖骨、胸が下がり元の位置に戻ります。(肩はできるだけ動かさず、鎖骨が上下に動くように。)両手をクロスさせて鎖骨に手を添えて行うと、鎖骨の動きが感じやすいです。

完全呼吸とは

完全呼吸は、腹式呼吸、胸式呼吸、鎖骨呼吸を組み合わせた呼吸法です。肺の容量を全て使って行うこの呼吸法は、体の隅々まで空気を行き渡らせ、緊張を取り除き、気持ちを鎮めてくれる効果があります。この完全呼吸は、全てのプラーナーヤーマの練習の基礎となります。

腹式呼吸を単体で行う場合は、主にリラックスを目的として行われることが多いです。(タマス的な性質)反対に、胸式呼吸を単体で行う場合は心がラジャスの方に傾きやすいと考えられます。

プラーナーヤーマの練習の一環として、瞑想を目的として行うのであれば、完全呼吸を行うことがお勧めです。タマス的な要素とラジャス的な要素のバランスをとり、心をサットヴァ的な状態に整えてくれます。

完全呼吸のやり方と呼吸のパターン

完全呼吸には、大きく2つやり方(吐き方)があります。吸う時のやり方は同じで、お腹から、胸、鎖骨の順に下から上に吸っていきます。吐く時には、上から下(鎖骨、胸、お腹)の順で吐いていくか、下から上(お腹、胸、鎖骨)の順で吐いていくかで、異なる2つのアプローチがあります。

通常の呼吸では、上から下に吐いていくやり方の方が自然に行えます。主にリラックスが目的の場合にはこちらのやり方で行います。

反対に、ナディ・ショーダナなどの呼吸法の準備として行う場合は、お腹から順に吐いていくやり方がお勧めです。胸を引き上げたまま、先にお腹から吐くためには、腹部全体の筋肉を使い、集中力も必要です。胸から吐くよりお腹から吐くほうが、腹筋力・バンダが必要と考えられます。

(このお腹から先に吐く完全呼吸は、仰向けや座位のポーズで練習しましょう。アーサナの練習中は別のバンダの使い方が推奨されています。-inhalation- Uddiyana Bandha) )

  • 【リラックスが目的の場合】腹式&胸式&鎖骨呼吸(下から上に吸い、上から下の順で吐く)
  • 【プラーナーヤーマの準備(ナディ・ショーダナ、スーリヤ・ベーダナなど)】腹式&胸式&鎖骨呼吸(下から上に吸い、下から上の順で吐く)

まとめ&アクションプラン

いろんなヨガの呼吸法、完全呼吸のやり方があるのはわかったけれど、いったい何を練習すればいいの?

そんな方にお勧めしたい目的別呼吸法テクニックとプラクティスの順番をまとめました。

マインドを落ち着かせ、リラックスしたい方

▶︎ 仰向けで行う完全呼吸法・下からお腹、胸、鎖骨の順で吸い、上から下に鎖骨、胸、お腹の順に吐いていく。自然な呼吸の流れを意識。

プラーナーヤーマ、瞑想の準備をしたい方

▶︎ 座位で行う完全呼吸法・下からお腹、胸、鎖骨の順で吸い、下から上にお腹、胸、鎖骨の順に吐いていく。腹筋を使って完全に吐き切ることを意識。

プラーナーヤーマの練習に最適なヨガの座り方はこちらの記事を参考にしてください。

練習方法:

【ステップ1】吸う息:吐く息の長さ1:1 からスタート

【ステップ2】吸う息:吐く息の長さ1:2 (吐く息が吸う息の2倍の長さ)

【ステップ3】吸う息:吐く息:止息(クンバカ)1:1:2

独学でプラクティスする場合は、まずは吸う息と吐く息1:1の比率で、少しづつ長くしていきましょう。最初のうちは、呼吸の長さやカウントに囚われるよりも、1回1回の呼吸の質にこだわって丁寧に行ってみましょう。

プラーナーヤーマの練習時間&タイミング&頻度

プラーナーヤーマの練習時間として1日5分くらいを最初の目標に設定するのをお勧めします。多くの場合、最初から30分の練習をやろうとしても、続かなくなってやめてしまうからです。まずは少しづつ、短くても毎日継続することを目標にしましょう。そこから少しづつ、10分〜20分程度に伸ばしていくことも可能です。

プラーナーヤーマの練習は、食事の前に行いましょう。朝起きて、ヨガのアーサナプラクティスの後がお勧めです。

理想的なメニューとしては、アーサナ練習→プラーナーヤーマ→シャバーサナ→瞑想でしょうか。

ヨガの完全呼吸法は、全てのプラーナーヤーマの基礎となります。呼吸をコントロールすることは、心をコントロールすることにつながります。吸う息、吐く息、一呼吸一呼吸を意識的に行うことで、集中力を高め、瞑想を深めることができるようになります。