シャト・クリヤー ヨガの6つの浄化法
シャト・クリヤー(シャト・カルマ)とは、ヨガにおける6つの浄化法です。
浄化法は、ヨガのアーサナ(ポーズ)、プラーナーヤーマ(呼吸法)そして瞑想の準備として実践されるヨガのテクニックです。ヨガの経典でも「クリヤーでナディ(エネルギーの通り道)を浄化してから、呼吸法(クンバカ)の練習に取り組むべし」と強調されてます。
つまり、ヨガのプラーナーヤーマの実践者にとっては、まずクリヤー(浄化法)の練習をすることが必須条件と言えます。浄化法を学び、実践を続けることで、呼吸法、瞑想の練習の質を高めることができます。ヨガの浄化法・シャト・クリヤーへの理解を深め、毎日の実践に取り入れていきましょう。
シャト・クリヤー(浄化法)とは?
Shatシャトとは、6という意味、Kriya クリヤーはテクニックや手法という意味があります。「シャト・クリヤー」、「シャト・カルマ」経典によって呼び方は異なりますが、同じ意味を持ちます。
ヨガの経典、ゲーランダ・サンヒターにおいては、浄化法が一番最初の章にきています。
水につかっている焼いていないガタ(土器)のように身体は絶えず老化していく。ヨーガの火で焼くことによって身体の浄化を行うべし
ゲーランダ・サンヒター 1章8節 佐保田鶴治・訳
ゲーランダー・サンヒターにおいては肉体に基づいたヨガを重視していて、浄化法は全てのプラクティショナーが実践すべきものとして書かれています。
一方、ハタ・ヨーガ・プラディピカーという経典の中では、浄化法はプラーナーヤーマ(呼吸法)の章の中に含まれています。全員が実践する必要はなく、カパ体質の人(肥満体質、粘液体質の人)のみ実践すべきものとしています。
肥満体質と粘液体質の人は修習する前に、六つの作法を正しく行うべし。その他の人はこれらの作法を行う必要はない。なぜかと言えば三つの体質が平均しているからである。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 2章21節 佐保田鶴治・訳
経典によって、浄化法の位置付けは異なりますが、プラーナーヤーマを実践する上では、クリヤーでナディ(エネルギーの通り道)を浄化することが必須であるという点は、その他多くの経典で強調されています。
なぜクリヤーを練習するのか?浄化法の効果
シャト・クリヤーを実践することによって肉体を強化し、浄化することができます。集中力を高め、体内の毒素を取り除き、身体を病気から遠ざけます。
身体的な効果だけでなく、エネルギー的な観点からも大きなメリットがあります。クリヤーの実践は体の臓器とナディ(エネルギーの通り道)におけるプラーナと呼ばれる生命エネルギーの動きを活発にしてくれます。
6つの浄化法
・ダウティ(Dhauti)(体内の浄化)・
・ヴァスティ(Basti)(腸内の浄化)
・ネーティ(Neti)(鼻の浄化)
・トラータカ(Trataka)(凝視作法・眼の浄化)
・ナウリ(Nauli)腹部の運動による浄化法
・カパラバティ(Kapalbhati)光る頭蓋骨・炎の呼吸法(頭部の浄化)
6つの浄化法のうち、ダウティとバスティはアーユルヴェーダの一部として実践されるものとなります。専門の医師の指導の元で行うことが必要です。
その他の4つ、ネティ、トラタカ、ナウリ、カパラバティは、毎日のプラクティスとして取り入れることが可能です。(実績のある経験者・インストラクターの元で学ぶことが推奨されます)
中でも、プラーナーヤーマ(呼吸法)の準備として、非常に重要なのは、ナウリ、カパラバティです。(この2つはアーユルヴェーダーには含まれていません)トラタカは、プラーナーヤーマの次のステップであるプラティヤハーラ(制感)ダーラナー(集中)の準備となります。
この記事では、プラーナーヤーマの準備となる特に重要な3つの浄化法について詳しく見ていきます。
ジャラ・ネーティ
ネーティの作法は、頭の中を清め、霊的な直感を与え、肩より上に生じた色々な病気の類をすみやかに無くする。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 2章30節 佐保田鶴治・訳
ネーティには2種類のテクニックがあります。一つ目はスートラ・ネーティ、そしてもう一つがジャラ・ネーティ。スートラネーティは紐を鼻から通して口から出すと言うものなので、毎日の実践には不向きです。もう一つのジャラ・ネーティは、片方の鼻から食塩水を入れもう片方の鼻から出すと言うもの。ネティ・ポットと塩があれば、簡単におうちでも実践できます。
ジャラ・ネーティを日常的に行うことは、プラーナーヤーマーの実践者にとって非常に重要です。特に、ナディ・ショーダナー(片鼻呼吸法)を行うために、鼻から呼吸が通りやすくしておく必要があります。鼻の浄化(ジャラ・ネーティ)をすることで、ナディが浄化され、プラーナ(エネルギーの流れ)のバランスが整い、瞑想状態に入りやすくなると考えられています。
鼻洗浄のやり方は、最初は難しく感じますが、続けていくうちにすぐに慣れてきます。鼻が詰まっている方、花粉症の方は毎日行うのがおすすめです。プラーヤーヤーマの練習直前にやってしまうと、鼻に水が残っていることがあるので、プラーナーヤーマの練習後の方が良いとされています。私自身は、朝起きてすぐ片鼻の詰まりを感じることが多く、朝一番にジャラ・ネーティを行っています。
昔は、ドラッグストアでも生理食塩水を安価に手に入れることができましたが、今は処方箋が必要なようです。コップ1杯のぬるま湯に、ティースプーン1杯の食塩を溶かすやり方でも可能です。(毎日大量に使うので私は手作りしています)
ナウリ
ナーウリははたらきの緩んだ消化の火の再燃と、従って食物の消化とを来すものであり、常に快適な気持ちを生み、体質の不調和からくる疾患のことごとくを無くするものであって、ハタの操作の根本をなすものである。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 2章34節 佐保田鶴治・訳
ラーウリキ(腹部揺動作法)はげしい勢いで、腹部を左右に揺り動かすべし。この作法は全ての病気を無くし、体内の火(消化力)を増大する。
ゲーランダ・サンヒター 1章52節 佐保田鶴治・訳
ナウリはプラーナーヤーマの準備として重要な浄化法です。ナウリを一言で言うならば、お腹の筋肉を激しく動かすテクニック。腹直筋を収縮させ、浮立たせるような動きが特徴的です。吸う息で、腹部の筋肉を引き込むことで、腹部がマッサージされ、心臓や肺などの臓器を強くし、毒素を出してくれます。さらに消化力を高め、消化不良を改善してくれるといった効果があります。
ナウリを練習することで、プラーナーヤーマ(呼吸法)やクンバカ(止息)を実践するための準備となります。
ナウリの詳細はこちらのブログ記事を参照してください。
カパラバティ
カパーラ・バーティ かじ屋の使うふいごのように、すばやく交代する呼吸がカパーラ・バーティと言われるもので、粘液質の過剰からくる疾患を消す。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 2章35節 佐保田鶴治・訳
カパラバティは6つの浄化法の中でも最も重要なテクニックの一つです。
カパラバティ自体がプラーナヤーマ(呼吸法)として扱われる場合もありますが、クンバカ(息止)を入れずに行う場合は浄化法となり、プラーナヤーマの練習を行う前の準備として取り組むのが良いとされています。
カパラバティの詳細はこちらのブログ記事を参照してください。
日々実践できるヨガの浄化法のまとめ
ヨガには6種のシャト・クリヤー(浄化法)がある。その中でも、日々実践できプラーナーヤーマの基礎となるものは以下の3つ。
- ジャラ・ネーティ
- ナウリ
- カパラバティ
この3つの中でも、ナウリ(腹部の運動による浄化法)は比較的難易度が高く、長期の練習が必要となります。
直ぐに実践できる浄化法としては、ジャラ・ネーティ、カパラバティがあげられます。ジャラ・ネーティで鼻のつまりを取り除き、呼吸しやすくすることで、カパラバティの実践もやりやすくなります。
ナウリもカパラバティも、空腹時に行う必要がありますので朝起きて直ぐかヨガのプラクティス後・朝食前に実践するのがおすすめです。
インターネットが普及し、テクノロジーが発達した現代、私たちの生活は自然のサイクルから離れてしまい、体、心のバランスを崩しやすくなっています。添加物などによる食べ物の汚染、空気の汚染、そして一日中PCやスマホの電磁波にさらされています。現代のわたしたちは昔のヨギたちよりもより浄化が必要な環境に生きていると言えます。現代の私たちが実践でき、大きな効果を得られるテクニックが15〜17世紀に体系化されていたと考えると、驚くばかりです。