【ナウリ】アグニ・サーラ~ヨガの浄化法で消化の火を高める~

プラーナーヤーマを実践するために、ヨガの浄化法の一つである、ナウリ・クリヤーの練習を始めました。

片岡鶴太郎さんが実践しているのをテレビで見たことがある人も多いのではないでしょうか?初めて見る方はびっくりするかもしれません。腹直筋を浮立たせ、お腹の筋肉を激しく動かすテクニックです。

私が実際にナウリの練習をはじめて気づいたのは、自分のお腹がポッコリすぎて、どんなに頑張るも、腹直筋が見えてこない・・・!?と言う悲しい現実。

私のようにぽっこりお腹の方でも実践しやすい、ナウリの簡単バージョン(バーヒヤ・ウディヤーナ)をシェアしたいと思います。バーヒヤ・ウディヤーナをマスターして、腹直筋がしっかり出来てくれば、腹直筋を収縮させる本格的なナウリのプラクティスができるようになります。

ナウリとは

ナーウリははたらきの緩んだ消化の火の再燃と、従って食物の消化とを来すものであり、常に快適な気持ちを生み、体質の不調和からくる疾患のことごとくを無くするものであって、ハタの操作の根本をなすものである。

ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 2章34節 佐保田鶴治・訳

ラーウリキ(腹部揺動作法)はげしい勢いで、腹部を左右に揺り動かすべし。この作法は全ての病気を無くし、体内の火(消化力)を増大する。

ゲーランダ・サンヒター 1章52節 佐保田鶴治・訳

ナウリは「アグニ・サーラ』とも呼ばれ、消化の火を高めてくれる力強いヨガの浄化法のテクニックです。一言で表現するなら、「息を止めたまま、腹圧を高めて腹部を動かしていくテクニック」。吸う息で、腹部の筋肉を引き込むことで、腹部がマッサージされ、心臓や肺などの臓器を強くし、毒素を出してくれます。

ヨガのポーズの練習に比較的長い時間がかかることを考えると、ナウリは毎日5分実践するだけでも非常に大きな効果が得られます。他のプラーナーヤーマと比較しても、ナウリほど短時間で腹部や内臓に刺激を与えることのできるエクセサイズは多くありません。

ナウリは吐いた後、バーヒヤ・ウディヤーナと呼ばれる息を止めた状態で行います(外的クンバカ)つまり、ナウリはヨガのプラーナーヤーマで実践するクンバカ(止息)を実践するための準備とも言えます。正式には、10秒以上息を止める場合にクンバカという表現が使われますが、ナウリの練習の場合はクンバカの長さは気にせず、自分の保持できる長さで行います。

ナウリは最も重要なヨガ浄化法のひとつ

ヨガの経典ハタ・ヨーガ・プラディーピカーには、クリヤー(浄化法)とよばれる6つの浄化プロセス(シャットカルマ)が述べられています。

6つの浄化法

・ダウティ(Dhauti)(体内の浄化)

・ヴァスティ(Basti)(腸内の浄化)

・ネーティ(Neti)(鼻の浄化)

・トラータカ(Trataka)(凝視作法・眼の浄化)

・ナウリ(Nauli)腹部の運動による浄化法

・カパラバティ(Kapalbhati)光る頭蓋骨・炎の呼吸法(頭部の浄化)

肥満体質の人と粘液体質の人は調気法を修習する前に、六つの作法を正しく行うべし。その他の人はこれらの作法を行う必要はない。なぜかといえば、三つの体質が平均しているからである。(ここで言う3つの体質とはアーユルヴェーダにおけるヴァータ、ピッタ、カパを指す)

(四章版)ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 2章21節 佐保田鶴治・訳

A Yogi, having established in asana and is free from fatigue, should practice purification of nadis, mudras and pranayama.

アーサナによって疲れない体を確立できたら、次にクリヤー、ムドラー、プラーナーヤーマによってナーディーを浄化する

(十章版)ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 3章1節(日本語版がないため意訳)

ハタ・ヨーガ・プラディーピカーによると、体に脂肪や痰がある場合は、ナーディー(エネルギーの通り道)を詰まらせるため、プラーナーヤーマ(呼吸法)の実践の前にクリヤーを行うことが推奨されています。ただし、10章版のハタ・ヨーガ・プラディーピカーでは、アーサナ(ポーズ)、クリヤー(浄化法)、プラーナーヤーマ(呼吸法)の順で行うことが提案されています。(実践の順番は、経典によって見解が異なる)

ナディショーダナ(片鼻呼吸法)の練習の前に、ジャラネティで鼻を浄化することが推奨されることからも、アーサナの次の段階として、浄化法をヨガの練習に取り入れることは、プラーナーヤーマの準備としても有効です。

ナーディーに滞りがあると、瞑想の実践も正しくできないという見解もあるようです。ヨガのアーサナを確立した後、八支則の次の段階であるプラーナーヤーマ、瞑想を深めたいと思う場合にもクリヤーの実践は重要となります。

6つの浄化法のなかでも特に、ナウリ、カパラバティの二つは、プラーナーヤーマの実践と非常に関連が深く、プラーナーヤーマ実践者にとっては重要なテクニックといえます。

食物、水、空気の化学物質による汚染、放射線、電気、マイクロ波、携帯電話、放射線など、今日の私たちの前に立ちはだかる多くの毒素の一部を排出するために、浄化プロセスを実践することは、ますます必要になっている。クリヤーは、現代の工業化された都市社会において、より重要な役割を果たしている。

プラーナーヤーマ ヨーガの呼吸 Gregor Maehle著
シャトクリヤーについての詳細はこちらも参照ください

ナウリの効果

・消化力を高める

・腹筋力を高める

・メタボ改善

・内臓に溜まった毒素を排出する

・ナディ(エネルギーの通り道)を浄化し、エネルギーの流れを良くする

ナウリの効果は身体的な効果だけにとどまりません。ナウリで行うバーヒヤ・ウディヤーナ(外的クンバカ)はプラーナーヤーマで実践する外的クンバカ(止息)を実践するための準備となります。

さらに、ナウリは体内エネルギーを上昇させ、覚醒させるための重要なツールであり、ヨーガの最終的なゴールである瞑想、サマーディ(三昧)へ至るための一つのステップだと言えます。

ナウリを実践しない方がいい人・禁忌

妊娠中・生理中の女性・産後6週間以内・妊娠を望む時期・子供(思春期未満)

高血圧・ヘルニア・心疾患・緑内障の人など

暑い地域に住んでいる人、真夏の熱波の中では行わない

ナウリを練習する時間帯

必ず空腹時に行う

朝早い時間帯・ヨガの練習前後

モーニング・プラクティス例:

  • ジャラ・ネティ(鼻うがい)
  • ナウリ(朝起きてすぐ)
  • アーサナ
  • プラーナーヤーマ
  • バストリカ呼吸法
  • アグニ・ソーマ
  • カパラバティ 
  • ナディ・ショーダナ(片鼻呼吸法)
  • 瞑想 

私は、今はこの順番でナウリを毎朝のプラクティスに組み込んでいます。必ずしもこの順番で行う必要はありませんが、ナウリを最初に行うことで、体が目覚め、エネルギーが満ちてくるように感じます。

初めてナウリを練習するときは、経験のある指導者のもとで行いましょう。ナウリは、短時間で実践できる割に、高い効果の期待できる浄化法といえます。そのため、正しいやり方で実践し、継続して練習することが重要です。

4段階のナウリ

マデャマ・ナウリ(madhyana-nauli)腹直筋を浮立たせる

ヴァ―マ・ナウリ(vama-nauli )左側の腹直筋のみを浮立たせる

ダクシナ・ナウリ(daksina-nauli )右側の腹直筋のみ浮立たせる

ナウリ・クリヤー(nauli-kriya )反時計回り、時計回りに上記の3つの動きを連続して行う

ナウリは4つのステージに分かれています。けれど、これらの練習を始めるためには、まずは腹直筋を収縮させ浮立たせる必要があります。

特に女性で、私のように腹直筋が全然見えてこない、ぽっこりお腹さんの場合にはそもそも難しいというのが体感です。

そのような場合、ナウリ実践の準備となるのがウディアーナバンダのひとつであるバーヒヤ・ウディヤーナ(外的クンバカ)です。(ウディーヤーナバンダには、厳密には吸気・内的クンバカ・呼気・外的クンバカの4つの段階がある)

バンダとは、絞めると言う意味を持ち、エネルギーを外に漏らさないようにするためのエネルギーロックのようなものです。ウディアーナバンダは腹部を背骨の方に引き込み、横隔膜を上へ持ち上げる動きです。腹筋を鍛えるだけでなく、腹圧を高めることで、内臓が刺激・マッサージされます。

ナウリのはじめ方・バーヒヤ・ウディヤーナの実践

  • 立った姿勢で、足を腰幅に開きます。両手は腿の上(指先は膝のほうをむけておきます)膝を曲げて前屈みになり、お腹の方を見ます
  • 息を鼻から全て吐き出し、完全に吐ききったら、喉を締めて息を止めます。(吐ききった時に、腹筋は完全にリラックスしている状態)
  • 喉を締めながら、お腹を思い切りへこませます。胸郭が引き上がり、横隔膜も上に持ち上がった状態(口を閉じたままお腹を引っ込めて息を吸うようなイメージ)
  • お腹をへこませた状態で、腹筋の力を全て手放すようにして、引き上げていた胸郭、肺を一気にリリースさせます(息は止めたまま)
  • 息は止めたまま、この動き(お腹をへこます〜リリースさせる)を繰り返します。(最初は1クンバカ=10ストローク〜くらいを目標に、徐々にストロークを増やしていきます)

簡単にまとめると・・・

  • 吐く(お腹を完全にリラックス)
  • 喉を絞める(顎を胸に近づける)
  • 胸郭を引き上げる
  • お腹の力を完全に・一気に手放す
  • お腹をへこます〜リリース(=1ストローク)のプロセスを繰り返す

バーヒヤ・ウディヤーナの次のステップ(4段階のナウリ)へ進む場合は、経験豊富なヨガの指導者のもとで実践することが推奨されます。

(この動画のStep2がバーヒヤウディヤーナです)

ナウリを毎日のプラクティスに取り入れる

腹直筋が全く見えてこないぽっこりお腹を直視するのは辛いのですが、いつか、マディマ・ナウリ(腹直筋を浮立たせる)のステージに進めることをイメージしつつ、毎日継続していきます。

今、お腹にびっしりついているこのお肉も、自分のこれまでの生活習慣、食習慣が作り出したもの。今の自分の現状を受け入れた上で、焦らず少しづつ自分の心と体の変化を楽しんでいきましょう。

ヨガの目的は上達することではない。練習すること自体がヨガの目的です。毎日5分の短い練習でも継続することで少しづつ変化を感じられます。