【ナディーショーダナ(片鼻呼吸法)】集中力を高めるヨガの呼吸法
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集中力を取り戻し仕事の効率と生産性を高めるテクニック
「今日1日何をしていたんだろう?」1日8時間仕事をしていたのに、何をしていたか思い出せない。
あなたはこんな経験はないでしょうか?
次から次へとふってくる小さなタスクをその都度こなしていると、時間だけがあっという間に過ぎてしまう。その結果、重要な仕事に全く手をつけられていない、そんな人も多いのではないでしょうか?
集中力を保つのに重要なポイントは、大きく3つ。
- 重要な仕事から取りかかる
- シングルタスク(マルチタスクをやめること)
- 邪魔されにくい環境を作る
朝、もっとも脳が冴えている時間帯に、最も重要なタスクを完了させることができれば、今よりももっと仕事で評価され、残業時間を減らし、仕事に成長を感じられる。集中力をもって、重要なタスクを終わらせることができるはずです。これはビジネスで評価され、結果を出し続けるために最も重要な要素の一つではないでしょうか。重要なタスクから先に終わらせる。この重要性は、「Eat That Frog!」(カエルを食べてしまえ!ブライアン・トレーシー著でも強調されています。
どんなに集中していても、実際の仕事においては、頻繁に邪魔がはいり、集中力を失い、中断してしまう。
そしてたとえ電話やメールをミュートにし、邪魔されにくい環境を作ったとしても、私たちの思考は常に、目の前の仕事以外のことに向きがちです。
(私たちの思考の95%は昨日と同じ繰り返し、そのうち8割はネガティブな思考、という研究データもあります。(アメリカ国立科学財団のデータ(2005年))集中していると思っていても私たちはほとんどの時間を昨日と同じ思考を繰り返していることになります)
この記事では、どうしても集中できない時や集中力中断したあとでも、5分で集中力を取り戻すためのテクニックをお伝えします。
集中することの重要性 – 集中力が途切れると再び集中を取り戻すまでに22分かかる
「今日は集中できているぞ」そんな時でも、いったん集中力が途切れると、再び集中を取り戻すまでに平均で22分もかかるという研究結果があります。
22分と聞くと、それほど大きな数字ではないように感じます。けれど、1日4回集中力が途切れると仮定して計算してみると、一月で29時間(3.6日)、年間で352時間(44日間)の時間を失っているとも言えます。
この数字は、私たちが仕事中に集中力を維持することがいかに重要かを示しています。
頻繁に集中力が途切れると、その都度22分も失われるため、長期的な観点から生産性に大きな影響を与えます。
さらに、集中力が途切れると、ミスやエラーのリスクも増加します。ビジネスにおいて、誤った情報や間違いは致命的な結果をもたらす可能性があります。
そのため、集中力の維持は、業務の正確性や品質に直結し、組織や個人の信頼性にも影響を与えます。
集中力を高める呼吸法「ナディショーダナ」
- 仕事や勉強中に集中力を高めたい
- 仕事が中断した後でも集中力をできるだけ早く取り戻したい
そんな人におすすめなのが、ヨガの呼吸法のテクニックのひとつである片鼻呼吸法です。サンスクリット語では、ナディーショーダナ、北インド地方ではアヌローマ・ヴィローマとも呼ばれています。
片鼻呼吸法(ナディショーダナ)は左右の鼻で交互に行う呼吸法。
陰と陽のエネルギーバランスを整えてくれる、ヨガのプラーナヤーマ(呼吸法)の中でも最も重要とされるテクニックの一つです。
私たちの日常の呼吸は片方の鼻で行われており、自律神経の働きで無意識のうちに1〜2時間おきに左右が入れ替わっているそうです。
左右どちらの鼻が支配しているかで、右脳と左脳、どちらの脳が活発になっているかということにも関係しています。右脳は、直感的なことや、感覚的なことを司り、左脳は論理的で推論的な役割を担っています。また、呼吸する鼻によって優勢となる神経も変わってきます。右側の鼻で呼吸しているときは交感神経、左側の鼻で呼吸しているときは副交感神経。この左右を調和させることでプラーナ(気の流れ)のバランスをとり集中力を高めてくれます。片鼻呼吸法(ナディショーダナ)のプラクティスは、瞑想への準備としても非常に効果的です。
「ナディショーダナ」の科学的効果
ナディショーダナは、心身のバランスを整え、集中力を高める効果があることが科学的にも示されています。例えば、ある研究では、この呼吸法を実践することでストレスレベルが低下し、注意力が向上することが確認されています 。
さらに、ナディショーダナは自律神経系を調整し、心拍数や血圧を安定させる効果もあります 。
ナディショーダナは、ヨガの観点から、陰陽のエネルギーバランスを整えたり、呼吸の質を高めたり、右脳と左脳のバランスをとるなど多くのメリットがあります。
その中でも、科学的に効果が実証されているのは以下の3つです。
- ストレスレベルの低下
- 注意力の向上
- 自律神経の調整(自律神経系を調整し、心拍数や血圧を安定させる)
ナディーショーダナは、集中力を高めることはもちろん、副交感神経・交感神経のバランスをとることで、自律神経系を調整し、心拍数や血圧を安定させる効果もあります 。
呼吸の長さを調整することによって、集中力を高めるテクニックとして使うこともありますが、
吐く息を長めにし(副交感神経を刺激)、睡眠前にリラックスを感じるテクニックとしても非常に有効です。
なぜ呼吸法テクニックが有効なのか?
ナディショーダナは、集中力を高める効果的な呼吸法の一つです。なぜなら、以下の理由から他のメソッドよりも優れているからです。
- 5分で実践可能:繁忙なスケジュールでも、たった5分の短い時間で実践できます。
- 即効性がある:ナディショーダナを行うと、ほとんど即座に集中力が高まります。
- 自律神経を直接コントロール:ナディショーダナは、自律神経を調整し、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらします。
ナディショーダナの実践方法
どちらかの鼻が詰まっている場合は、始める前にジャラ・ネティ(鼻洗浄)がおすすめ
片鼻呼吸法の練習をはじめる時、どちらかの鼻が詰まっているケースが多くあります。そんな時にオススメなのがジャラ・ネティ(鼻うがい)です。
私は朝と夜寝る前にジャラ・ネティを行っていますが、呼吸法の練習が非常にやりやすくなるだけでなく、鼻がすっきりするので、睡眠の質も上がったように感じます。
片鼻呼吸法のやり方
座り方
無理のないまっすぐな姿勢で座ります。ヨガが初めての方は安楽座(スカーサナ)がオススメです。特に骨盤を立たせて、背骨・首・頭をまっすぐにして安定した座法で座ることが大切です。
ムドラー(手の形)の組み方
交互の鼻を開けたり閉めたりするのに、手の指を使います。ナディショーダナ(片鼻呼吸法)を実践するのに大きく2つのムドラー(手の形)があります。
伝統的には、Shanka Mudraと呼ばれる人差し指と中指を折り曲げるムドラーがあり、もう一つのやり方としては、薬指と小指を折り曲げて、人差し指と中指を額の真ん中(第3の目)にあてる方法があります。どちらでもやり易い方をチョイスしましょう。伝統的には、ムドラーを組むのは右手とされています。(インドでは、左手は不浄とされるため)
呼吸法のやり方(必ず左からスタート)
この呼吸法では、必ず左の鼻(イダ)の吸う息からスタートし、左の鼻から吐く息で終わります。経典によると左の鼻から呼吸を行うことでアムリタ(甘露)を作り出し、右の鼻から行うと、熱と毒を生み出すとも考えられていたようです。
- 安定した座法で座る
- ムドラー(手の形)を組み、親指で右の鼻孔をおさえる。
- 左の鼻からゆっくりと吸います
- 吸い切ったら親指を離し、薬指で左側の鼻孔を閉じます。
- 右の鼻からゆっくりと息を吐きます。
- 吐き切ったら、右の鼻から吸います。
- 吸い切ったら、薬指を離し、親指で右の鼻腔を押さえます。
- 左の鼻からゆっくりと息を吐きます。(ここまでで1ラウンド)
最初のうちは、吸う息と吐く息1:1の長さからスタートしましょう。自分が心地よいと思える長さでホールドします。吸う息4秒、吐く息4秒くらいからスタートし、慣れてきたら徐々に20秒〜くらいまで伸ばして、吐くいきを長くしていきます(1:2)。一番大切なのは、自分が心地よいと思える長さで行うことです。決して無理はしないようにしましょう。(無理にカウント・クンバカ(止息)しなくても良い)
ナディショーダナを取り入れた毎日5分のルーティン
ナディーショーダナを練習するベストなタイミングは以下の3つです。その他、集中力途切れた時に、どんなタイミングでも取り入れることで交感神経・副交感神経のバランスを調整することが可能です。
- 仕事や勉強をスタートする前
- 食事後・午後から仕事や勉強をスタートする前
- 夜の就寝前
ナディショーダナ(片鼻呼吸法)はいつ、どのくらい回数やればいいのでしょうか?
ヨガの経典によると、1日18ラウンド(6ラウンドを1日3回)を3−4ヶ月継続することでナディが浄化されるとされています。(Vasishta Sanhita 2章67節)
個人差はありますが、最初のうちは6ラウンド行うのに5分もかかりません。1日3回15分を目安にナディショーダナ(片鼻呼吸法)を実践してみましょう。ヨガの練習後や瞑想の前に行うことが良いとされています。私は朝起きた後、夜寝る前に行っています。リラックス効果もあるので、睡眠の質を高めてくれている気がします。
集中力を高めたい時・集中力が途切れた時にはナディショーダナ(片鼻呼吸法)がおすすめ
日常生活や仕事の中で頻繁に集中力を失うことを防ぐためには、ナディショーダナのような効果的な呼吸法を取り入れることが重要です。特に、集中力を取り戻すのに22分もかかることを考えると、短時間で心身のリセットが可能なナディショーダナは非常に有効です。これにより、生産性の向上や仕事の効率化が期待できます。
参考文献
- Gloria Mark, Professor of Informatics at the University of California, Irvine. Study on the impact of interruptions on work.
- Scientific Journal of Yoga Studies. Effects of Nadi Shodhana on Stress and Attention.
- Journal of Health and Behavior. Impact of Yogic Breathing Techniques on Autonomic Nervous System.