六浦 ヨガのある暮らし〜視点を変えるヨガポーズ – ヘッドスタンドの効果とは?
ベルギーの王妃も練習していたヘッドスタンド
1958年ベルギーのエリザベル王妃が御年84歳の時、ヨガの教えを乞うためB.K.Sアイアンガー師を招きました。。病弱で心臓に問題を抱えていそうな王妃をみて、アイアンガー師は簡単な立位のポーズから教え始めたそうです。
それにとどまらず、王妃は「ヘッドスタンド(サーランバ・シルシャーサナ )のポーズを教えて欲しい。私にヘッドスタンドを教えるが怖いのなら次の列車でお帰りください」と粘ったそうです。アインガー師は王妃の粘り強さに感謝し「あなたにヘッドスタンドをする勇気があるなら私にもあなたに教える勇気があります」と答えました。(出典:「アイアンガーヨガ完全マニュアル」)
王妃がそこまで粘って練習したかったヘッドスタンドとはどのようなポーズなのでしょうか?ヘッドスタンド(サーランバ・シルシャーサナ )はサンスクリット語で「支えのある頭立ちのポーズ」と訳され、ヨガ上級者向けのポーズです。上腕と頭の3点で全身を支える代表的な逆転のポーズであり、アイアンガー師によると、ヨガの中で最も重要なアーサナの一つだとされています。心臓が頭より下に来る逆転のポーズでは、視点が変わることで心の変化を感じやすくなります。
ヨガスートラの中でパタンジャリは次のように述べています。(ヨガスートラ2章33節)
「ネガティブな雰囲気の中にとどまったままでネガティブな想念を制御することはよほどの強さを持たない限り難しい。一番簡単なのは環境を変えることだ。それがプラティ・パクシャ・バーバナである」
つまり逆転のポーズをすることで、視点が変わり、ポジティブな視点を作り出す。ヨガ的に「逆転の発想」を作ることができるのです。
ヘッドスタンドの効果
それでは、ヘッドスタンドには具体的にどのような効果があるのでしょうか?
心臓より頭が下にくることで、脳細胞そして内分泌腺への血液への供給が増え、リンパと静脈の循環の向上、免疫系の強化に効果があるとされています。アイアンガー師によるとヘッドスタンドの定期的な練習は、「精神的な領域を広め、思考の明確性を高める。集中力が高まり、記憶力が強化される」ということです。
代表的なヘッドスタンドの効果を下にまとめました。
身体的な効果
- スタミナをつける
- 肺活量の強化
- 血中のヘモグロビン含有量の増加
- 風邪、咳、扁桃炎の症状の緩和
(出典:「アイアンガーヨガ完全マニュアル」より一部抜粋)
精神的な効果
- 集中力アップ
- 記憶力アップ
- ポジティブ思考、逆転の発想
- ストレス(精神的疲労)低減
多くの効果が得られるヘッドスタンドのポーズですが、上級者向けのポーズとなりますので、必ずインストラクター指導の元で実践してください。また高血圧、顎椎症、背中の痛み、頭痛、偏頭痛、月経中の場合は控えた方がよいポーズになります。
初心者から練習できる逆転のポーズはヘッドスタンド以外にもあり、たくさんの効果が期待できますので、できるポーズから取り組んでいきましょう。
初心者〜中級者向けの逆転ポーズ
- ダウンドッグ
- プラサリータパドッタナーサナ
- 鋤のポーズ(ハラーサナ)
- 肩立ちのポーズ(ショルダースタンド)
毎朝のヘッドスタンドは究極のマインドフルネス瞑想
ヘッドスタンドのポーズがマインドフルネス瞑想の準備になります。なぜなら、ヘッドスタンドで逆さまになった状態ではいつものような思考がしにくくなり、自分の心の癖や思考パターンに囚われず、自分の心の変化が感じやすいからです。
私は、毎朝、起きたらまずヘッドスタンドをする習慣にしています。今日は寝坊したな、今日はだるいな、気分がのらないな、と思う日でもヘッドスタンドをすることで気分がさーっと入れ替わります。なぜか分からないのですが、めんどくさいという気持ちが消えて頭がクリアになる感覚を得ることができるのです。
ヘッドスタンドのポーズをキープするためには自分の呼吸、背骨をまっすぐ伸ばして軸を感じ、バランスをとるために全身に意識を向ける必要があります。この作業を完全に身体がリラックスした状態で行うことは、瞑想の準備となるだけでなく、マインドフル瞑想そのものだと言えるのではないでしょうか。
ヨガの素晴らしさは、年齢、性別、身体のコンディションに関係なく誰にでも実践できるところです。そしてなにより身体をバランスよく使うことで身体と心の両方をリラックスさせることができます。(ジョギング、テニス、フットボールといった肉体運動では身体を酷使して披露させるが、ヨガでは身体をリフレッシュできる)
逆転のポーズで、「逆転の発想」新しい視点を取り入れましょう。
「逆転のアーサナは身体の不純物を取り除き、強さ、平静さ、そして心の明快さをもたらす」アイアンガー師