【ウジャイ呼吸法】集中力を高めるオーシャンブレス

ヨガには目的に応じて様々な呼吸法がありますが、ほとんどの呼吸法は座位で瞑想の準備として行うものが多いです。ウジャイ呼吸は呼吸法の中でも数少ない動きながら行える呼吸であり、毎日のヨガのプラクティスに最適です。

ウジャイ呼吸法を学んで、毎日のヨガ・プラクティスに取り入れてみましょう。

ウジャイ呼吸とは

サンスクリット語でウジャイ(ujjayi)は勝利、征服、という意味があります。

ウジャイ呼吸は、喉を閉じ、呼吸の摩擦音を出しながら行う胸式呼吸です。(お腹をへこませたまま胸郭を意識して行う呼吸法)体を温め、神経系の働きを穏やかにし、気持ちを落ち着かせてくれます。

ウジャイ呼吸は立っていても座っていても、仰向けでもどんな姿勢でも行うことができます。呼吸の量をコントロールしやすく、気の流れを整えてくれるため、ヨガのアーサナ・プラクティスに最適です。呼吸音に集中することで、いつものヨガのプラクティスを動く瞑想として行えます。

ウジャイ呼吸はアシュタンガヨガの基本となる呼吸法です。アシュタンガヨガでは特に呼吸(ウジャイ)・視線・バンダ、この3つの要素が特に重視されていて、三つの要素が安定している状態をサンスクリット語で「トリスターナ」と呼んでいます。

アシュタンガヨガのクラスでは、他の生徒さんの呼吸音が聴こえてきますが、無理やり音を出すのではなく「喉の奥で鳴っている音」に耳を傾けます。自分の呼吸の音を聞くことで自分の内側に集中する。体の中から熱を生み出してくれるので冬は冷え性の方にもおすすめです。

ヨガの呼吸法(プラーナーヤーマ)では、プラーナ(生命エネルギー)を伸ばす=長くするために、呼吸を収縮するテクニックが多く取り入れられます。片鼻呼吸法では片鼻を閉じることで、シータリーでは舌を巻くことで、ウジャイー呼吸では、喉の奥をしめることで摩擦を生み出し、呼吸(プラーナ)を長く伸ばすことができると考えられます。

ヨガの呼吸法プラクティスでは、呼吸を長く伸ばし制御することで最終的にはクンバカと呼ばれる息止めを実践します。呼吸を制御することで、心の動きを鎮める。ヨガの最終的なゴールは瞑想を通じてサマーディ(三昧)と呼ばれる状態に至る心の解放を目指しています。

ウジャイー呼吸法は、この呼吸のコントロールを学ぶのに非常によい練習となります。

ウジャイ呼吸の効果

この調気法は、ノドのセキを去り、体内の火(消化力)を増強し、気道、体液、腹部、すべての体質等に存在する疾患を消し去る。このウジャイーとよばれるクンバカは歩きながらでも、立ちながらでも行うことができる。

ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 第2章52-53節

・体を温める

・血流循環を高める

・内臓器官の活性化

・神経系を沈める

・集中力を高める

ウジャイ呼吸のやり方

口を閉じ、両方の鼻孔から気をゆっくりと飲み込み、ノドから心臓に至るまでの気道にふれて音をたてるようにする。それからクンバカ(保息)して後、イダー気道(左の鼻孔)からイキを吐く。

ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 第2章51節

ウジャイ呼吸は2つの異なるやり方で実践されます。

  • アシュタンガヨガのアーサナ実践中に動きながら行われる技法
  • ヨガの正式なプラーナーヤーマの実践として座位で行われる技法

以下は瞑想の準備として行う座位の技法となります。

実践方法

  • 安楽座(スカーサナ)など安定して座れる座位のポーズになります。
  • 両手をお腹に添え、お腹をへこませた状態で、肋骨の広がりを意識して呼吸します。(胸式呼吸)慣れてきたら手は膝の上。
  • 窓ガラスをくもらせる時、息を吐きかけるのをイメージします。
  • 最初は、口を開けたまま息を吸い、口を開けたまま「ハァーーー」という音を聴きながら吐きます。(窓ガラスを曇らせるイメージ)
  • 柔らかい、静かな音が喉の奥から聞こえてくるまで何度か繰り返します。
  • 次に、口を閉じた状態で同じように行います。喉の奥で「スゥーーー」という音を聴きながら息を吸い、「スゥーーー」という音を聴きながら吐きます。
  • まずは吐く息(音)に集中しながら、一定のペースで、ゆっくりと呼吸します(1(吸う息):1(吐く息)の比率)

実践のコツ
ストローで吸っているようなイメージで、薄くゆっくりと呼吸する。喉の奥が振動する感覚。(鼻からでなく喉で感じる)呼吸の音が聞きづらい場合は、手のひらを耳に当てて呼吸してみましょう。喉の奥で鳴る摩擦音を感じやすくなります。

ウジャイ呼吸の音に慣れてきたら、ヨガの完全呼吸法を組み合わせます。(腹式呼吸・胸式呼吸・鎖骨呼吸を組み合わせた呼吸法)

  • 吸う時は、お腹・胸・鎖骨の順に下から上に
  • 吐く時は、お腹・胸・鎖骨の順に下から上に

お腹から吐くことで、タマス(無気力)状態にならないよう集中力を保持しやすいと考えられます。

副交感神経にアプローチするオーシャンブレス「海の呼吸」

ウジャイ呼吸は、オーシャンブレス「海の呼吸」とも呼ばれます。波が岸辺に押し寄せて、また引いていく音によく似ているからです。ウジャイ呼吸(オーシャンブレス)は吸気と呼気をゆっくり行うので神経系を鎮める働きがあります。均一で穏やかな落ち着きのある波の音を意識しておこないましょう。副交感神経にアプローチすることで、心拍数の低下や血圧の低下が期待できます。

最初のうちは、吸う息と吐く息が同じ長さ・同じ音になるように呼吸します。(自分と隣の人にだけ微かに聞こえるささやくような優しい音を意識します)

吸う息はラジャス(熱狂)を、吐くことはタマス(無気力)を表すため、吸う息と吐く息の割合を同じにすることで、エネルギーのバランスを整える効果があります。

なぜ呼吸がそんなに大切?

オーシャンブレス(ウジャイ呼吸)は、肺が大きく広がり、新鮮な空気を吸い込み、古くなった空気を吐き出します。世界的な呼吸法の指導者Max Strom氏によると、このプロセスが心を落ち着け、自分の中の悲しみを受け入れるのにとても効果的だと言います。オーシャンブレス(ウジャイ呼吸)は自分でコントールできない感情にうまく対応するための癒しのツールとなり得ます。英語版になりますが、Max Strom氏のTEDトークの中で呼吸法と癒し効果について語られています。(14:30~呼吸法の実践)

心と呼吸は一緒に動きます。呼吸法を練習することで、私たちは自分の体と心を意識的にコントールできるようになります。集中力を高め、心を落ち着かせることで瞑想の準備につながります。

全ての動きは、呼吸から起きる。呼吸とともに動き、呼吸に従うというよりも、呼吸が動きを起こすようにすべきである。このようにして練習すれば、まるで秋風が葉を拾い上げるように、動きは呼吸に促されるようになるはずである。

Gregor Maehle アシュタンガ・ヨーガの実践と探求より。

まず呼吸、そこに動きをのせていく感覚

呼吸に向き合う重要性

時々何も目的もなくスマホを手に取り、YouTubeを開いたりネットサーフィンをして、時間があっという間に過ぎてしまうことはないでしょうか?

私たちの多くはネット上に繰り広げられる多くの情報に振り回され、自分の心の奥底にある感情や自分自身に向かい合う静かな時間を作ることを忘れています。

ヨガの呼吸法は、そんな自分のマインドを落ち着け、本当に大切なことに集中させてくれる素晴らしい習慣です。