ヨガとは心の作用を止滅することである 

ヨガスートラ 1章 2節

ヨガ とは?

ヨガという言葉はYujというサンスクリットが語源になっていて「繫げる」「結びつける」という意味があります。ヨガは、古代インド4500年前から伝わる、自分への気づきを深める実践です。

ヨガの経典ヨーガ・スートラには「ガとは心の作用を止滅することである 」と定義されています。心の動きを止めて揺れ動く心を制御できれば、心身の苦しみから解放され、内なる平和や幸福を見つけられると考えられていました。ヨガをするゴールは、心が外のものに執着していない状態、外に探し求めるのでなく、自分自身の中にモークシャ(本当の自由•幸せ)を見つけることで、何かを探している自分自身から自由になること。生きているものには全て自分の役割(ダルマ)があり、自分の欲で精一杯な生き方ではなく、世界に対して自分の役割を見つけること、正しい選択が出来るようになるために心を整えて行くのがヨガである、とヨガの経典にはうたわれています。

ヨーガ・スートラの中では、心の解放を得るための段階的なアプローチとして、八支則(8 Limbs)が定義されています。ヨガは、アーサナ(ポーズ)の練習を通じて体を整え、呼吸法(プラーナーヤーマ)を通じてエネルギーバランスを整えていく、最終的には呼吸を制御し、瞑想へ至るための包括的なアプローチ・実践(Sadhana)だと捉えることができます。ヨガは「あらゆる苦悩から自由である生き方」を模索してきた道であり、自分自身を見失いがちな現代の私たちも多くを学ぶことができます。

ヨガ教室に来ているときも、隣の人と自分を比較してしまったり、周りの人と自分を比べてしまう。ということがあるのではないでしょうか?皆さんがヨガを実践していく中で、ぜひ自分の外側ではなく、内面に意識を向ける練習をしてほしいと思います。常に呼吸に合わせて動いていくことで、外のことを思考している暇がなくなります。心が自然と自分の内側に向いていく。外の世界の変化の中にあっても常にぶれることがない自分。変化を観察する自分という存在に気づくのがヨガの目的です。同じ練習を毎日繰り返しすことで、不思議と自分にとっての本当の正解、自分に合ったやり方、生き方が見えてくると私は思います。みなさんと一緒にヨガを通して学びと気づきを深められればと思います。

瞑想 とは?

私たちは多くの場合色眼鏡をかけて世界を見ています。それは自分の過去や他人の価値観、社会の常識、こうあるべき自分という他人の物差しで生きているということです。瞑想をすることの目的は、この心の固定概念を取り払って、まっすぐな心で世界を見ること。そしてありのままの自分を価値判断をせずまっすぐに見ることです。本当の自分自身を生き生きと生きるため、自分という存在が可能性のかたまりであり、世界に貢献できるユニークな存在であるということを、瞑想を通して学んでいきます。パターン化された思考を繰り返している限り、人生を変えることはできません。自分の自由意志でクリエイティブに考えることができるようにするために、まずは心の作用(動き)を止める(ヨーガ・チッタ・ブリッティ・ニローダハ)これを行っているのがヨガであり、「ありのままに見る」ための観察対象としてまずは自分の身体から整えていく、そして自分の呼吸、自分の心を見ていきます。自分らしい創造性にあふれた、生きたい人生を生きるための一つの方法が瞑想であり、ヨガが目指しているゴールです。

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、UCLA マインドフルネス アウェアネス リサーチセンター Diana Winston氏の定義によると「今この瞬間の感覚に、好奇心と意欲を持って意識を向けること」としています。なかでもマインドフルネスストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction (MBSR) )は、認知療法の枠組みに瞑想を統合した技法で、1970年代に生物学者・心理学者であるジョン・カバット・ジン博士が開発した手法です。その効果は、医学的•科学的にも実証されていて、ストレス低減の観点からビジネスの世界でも広く取り入れられています。

心と体と思考、この3つはそれぞれ密接に繋がっています。感情(心)がざわめくと、身体が反応し、体が反応すると私たちはパターン化した思考に囚われてしまい、その思考のネガティブループから抜け出すことは困難です。

マインドフルネスでは、注意力と好奇心をもって自分の呼吸、体の感覚、今起きていることに意識を向けていきます。今この瞬間に意識を戻していく練習をすることで、自分の中で固定化した思考パターンに気づき、それを手放していきます。

筋トレ・ストレッチと何が違うの?

体を動かしたいならばジムに通って筋トレすれば良いはず。なぜヨガを練習する必要があるのでしょうか?ヨガと筋トレとの違いは、ヨガはヨガ哲学に基づいているという点、具体的には、「呼吸」(プラーナーヤーマ)と「瞑想」(ディヤーナ)要素が含まれるという点です。ヨガと聞くと、多くの人は「アーサナ」と呼ばれるヨガのポーズを想像するのではないでしょうか。けれど、ポーズの練習はヨガの大きな枠組みのほんの入り口に過ぎません。

ヨガの最終的な目的は瞑想を通じて自分を観察すること。そのために呼吸に意識を集中させ、瞑想に入るための準備としてポーズを練習するのです。身体的な強化、肉体づくりを最終ゴールとする筋トレとは根本的に目指すところが異なります。ヨガでは呼吸と体の微細な感覚に集中するため、内面的な気づきが得やすいです。瞑想的な効果も期待できるため、長期的な目線で体と心、両方にアプローチしたい方におすすめです。

ヨガ哲学の考え方は私たち日常生活にも取り入れ、役立てる事ができます。

スティラ スッカム アーサナム「坐法は安定していて快適でなければならない」(ヨガスートラ2章46節)

アッビヤーサ ヴァイラーギャビャーン タン ニローダハ「これらの心の作用は修習と離浴によって死滅される」(ヨガスートラ1章12節)

プラティパクシャ・バーヴァナ「逆転の発想、視点を変える事でポジティブに捉える」(ヨガスートラ2章33節)

ヨーガ・スートラ

ヨガの効果

毎日続けることによって、少しずつカラダと心に変化が現れます。自分の身体と心に向き合えるヨガは毎日の心地よい習慣となります。私自身の体験・実感に基づくと、ヨガの効果は3段階に分けることができます。

  • 【一次的ベネフィット】:集中力UP、生産性向上、モチベーションアップ、ストレス低減(すぐに感じられる効果)
  • 【二次的ベネフィット】:腰痛改善、肩こり解消、柔軟性アップ、ホルモンバランスの調整、ダイエット(継続をすることで、効果を感じられる)
  • 【三次的ベネフィット】:自分の人生の方向性、本当の自分に気づきを得る。自分が心から生きたい人生、なりたい自分に近づける。

朝ヨガをすることで、心のもやもやが晴れ、クリアな思考で1日の仕事を始めることができます。そして、ヨガを継続することで様々な身体に関連する二次的効果が期待できます。ヨガを1日の習慣にすることで、必ずポジティブな変化を感じられるようになるはずです。

ヨガはどんな人に向いている?

年齢、性別の制限なく、誰でもどこでもヨガマットがなくても、小さなスペースさえあれば出来るのがヨガの素晴らしいところです。ヨガは「こうあるべき」と、一つの型に当てはめることはできません。人と比べず、自分にとって最適なやり方、効果的なアプローチを探究していくプロセスです。ヨガは私たち一人ひとりが、自分の身体と心に向き合う時間です。

体力に自信のない方でも、少しずつ継続的・長期的に取り組むことによって、徐々にカラダの可動域が広がり柔軟になっていくのを楽しむことができます。