リストラティブヨガは積極的なリラクゼーション

リストラティブの語源、”Restore” という言葉には「回復させる、元の状態に戻す」という意味があります。リストラティブヨガでは、様々なプロップス(補助用具)を使いながら、1つのポーズを長く(5−10分間)ホールドしていきます。身体を完全にブランケットやボルスターなどに委ねることで、副交感神経を活性化し積極的なリラクゼーションを促します。

リラックスと心身回復のために毎日積極的に時間をとっている人はどのくらいいるでしょうか?やるべきタスクにたくさん追われる生活の中で、リカクゼーションの時間は一見無駄な時間なように思えるかもしれません。しかし、慢性ストレスにさらされている現代社会に生きる私たちにとって、5分でも毎日身体を整えるために時間をとることはとても有効です。

「リストラティブヨガは何もしないことを実践する」リストラティブヨガの提唱者、ジュディス・ハンソン・ラサター先生はこう表現しています。リストラティブヨガは、体と心に意識を向け気づきを深めることで心身のエネルギーを充実させるアプローチなのです。

リストラティブヨガのルーツ

リストラティブヨガのルーツはアイアンガーヨガにあります。現代になって提唱された比較的新しいタイプのヨガスタイルです。(1990年代に考案)アイアンガーヨガは、専用のプロップスを使って誰でもヨガのポーズにアクセスできるように工夫していくアプローチです。ヨガのポーズをそれぞれの人に合わせてカスタマイズすることで、体の硬い人、体に痛みや不調を抱える人でも、ヨガを実践し心身の健康を目指すメソッドとも言えます。

このアイアンガーヨガのメソッドをベースに、ジュディス・ハンソン・ラサター先生がリストラティブヨガという新しい形で提案しました。

■ジュディス・ハンソン・ラサター先生:米国の理学療法士・アイアンガーヨガの正式認定指導者

リストラティブヨガと普通のヨガとの違いは?

リストラティブヨガは、重力に身を任せていきながら、心身の深いリラクゼーションをつくることにフォーカスします。

通常のヨガ(例:ハタヨガ、ヴィンヤサスタイルなど)との一番大きな違いは筋肉を使わずにできるだけ心地よい状態をつくること。そのために積極的にプロップスを利用する点です。アクティブに動くヨガスタイルでは、積極的に筋肉を伸ばしたり収縮させたりすることで、身体を強化するアプローチをとります。リストラティブヨガでは、できるだけ筋肉を使わずに行います。身体的、そして精神的な休息・回復を目的とします。

また、陰ヨガというヨガスタイルでは、筋肉をリラックスした状態で長い時間ホールドします。一見、リストラティブヨガと非常によく似たスタイルのようですが、その目的は違います。陰ヨガでは、関節や結合組織にゆるやかな負荷をあえてかけることで、身体的な強化・回復をターゲットとしています。リストラティブヨガは、体を積極的にリラックスさせ、疲弊した心を回復させるアプローチとも言えます。

リストラティブヨガの効果。どんな人に向いている?

【リストラティブヨガの主な効果】

○ 心拍数が落ち着く

○ 大脳を鎮静化する

○ 身体機能が休まる

○ 筋肉がリラックスする

○ 脳波によい影響を与え、心が落ち着く

○ 身体各器官への血液供給が増える

○ 消化器系・呼吸器系・循環器系・生殖器系・免疫系の機能が回復、最適化する

○ ホルモンバランスを整えてPMSの症状を和らげる

○ 慢性の痛みを和らげる

行うポーズによっても、その効果は異なります。共通しているのは、ポーズを長く保持し、呼吸を深め、副交感神経のスイッチをONにするという点です。つまり、全身の疲労回復だけでなくストレスやそれに付随する様々な不調を回復することができるヨガなのです。リストラティブヨガでは筋力を使わずに行います。年齢や、体力、体の柔軟性にかかわらず、誰もが自分の生活に取り入れられるでしょう。

たとえば、

  • 慢性的なストレス・緊張を抱えている人
  • イライラ、欲求不満、焦燥感を感じる人

こういった人にとても向いているヨガスタイルと言えます。

必要なプロップス

基本的なプロップスは以下の4つです

  • ヨガブロック
  • ヨガストラップ
  • ブランケット(バスタオルでも代用可能)
  • ボルスター

ポーズによってことなりますが、体を委ねられる環境を作るために最低限この4つはあるとよいでしょう。上記の他に、ポーズによっては壁や椅子も使います。自宅で実践する場合は、アイピローや、アロマ、音楽を使って、より心地よい環境を整えることができます。1日5分、1ポーズでもリストラティブヨガを実践することで、少しづつ効果を実感できるでしょう。

(具体的なプロップスの取り扱い方、使い方についてはジュディス・ハンソン・ラサター先生著「リストラティブヨガ」を参考にしてください。)

自分だけの時間・リストラティブヨガを家で実践しよう

リストラティブヨガはできるだけ毎日の生活に取り入れて、継続することが重要です。

  • 様々なプロップスを使う必要がある(環境を整えやすい)
  • 自分にとって必要なポーズを取り入れられる
  • 寝室やリビングルームなど自分の好きな時間に、好きな場所で行うことができる(=継続しやすい)
  • 自分だけの時間を味わうことができる(周りの人のペースを気にせず、自分の空間で集中できる)

上記のような理由から、私はリストラティブヨガは自分だけで実践するのが最適だと考えます。

最初は、ポーズの入り方やプロップスの使い方に戸惑うかもしれませんが、一度覚えてしまえば同じポーズを好きなタイミングで自分で実践できるようになります。

おすすめの書籍

リストラティブヨガは5分〜長い時で15分程度ホールドします。そのため1時間のヨガクラスで行えるのは5ポーズ程度です。たくさんのポーズを覚える必要もありません。まずは基本となるポーズを実践してみましょう。興味のある方は一度リストラティブヨガクラスに参加してみるのがよいでしょう。

実際に体験した上で、より詳しく学びたい方はジュディス・ハンソン・ラサター先生著「リストラティブヨガ」を参考にしてください。家で実践するための方法が丁寧に解説されています。

「耐える必要のない苦痛を治す方法と治せない苦痛に耐える方法をヨガは教えている」

出典:アイアンガー108の言葉。